2010年 12月 16日
「竜宮伝説」 |
先だって日本の古典に関心深い友人から、「浦島太郎の話が万葉集にあるって聴いたのだけど、知ってる?」と突然の電話があってなあ。正直いうと、ボクは古典には弱いんさ。ただ、二人の間でなにか話題になると、「分からん」では、みっともない思うて、そのつどネットで調べては、話題をつないだりしとるんや。この歳でも勉強にはなるもんな、「またひとつ賢くなったまだ死ねぬ」 ちゅうやつさな、ボクの迷川柳やけどな。
今回もそうや。「浦島さんの話言うたら、室町時代以降やで~、万葉集なんかには出て来んやろ」
「それが万葉集に出てるんですって、お得意のネットで調べて見て」 テキは、ボクの弱点先刻ご承知で見抜いてたわ。
調べて見るもんやなあ。浦島伝説の原型が万葉集にあったんや。知らんかったなあ。
「浦島太郎」の話は、誰でも知っとるわなあ。大概、うたも歌えるやろ。
「♪ むかし むかし 浦島は~ 助けた亀に連れられて~ 竜宮城へ来てみれば~…」 あれやがな~。
まあ、まず 唱歌 聴いてみてえ~。
そうさな、あのおとぎばなしや。浦島太郎は、浜で子供らにいじめられとった亀を助けたる。すると、お礼に亀が竜宮城へ連れて行く。竜宮城では乙姫様が大接待してくれた。すっかり有頂天になっとった太郎さんは、日のたつのも忘れとったけど、ああ、うちへ帰らななあかんわ、って乙姫さんに言うたら、これは絶対開けたらあかんに~て言うて、玉手箱くれたんや(パンドラの箱とおんなじみたいやなあ)。それ持って亀に送ってもらうて帰ってきたら、もう、村の様子がまるっきり変わってしもうとったんやなあ。そこで、乙姫さんに貰うて来た玉手箱をあけたら、白い煙が立ち上って、浦島太郎はおじいさんになってしもうた、とさ、ちょっとした快楽のあいだに300年の月日がたっとったちゅう話やさ、な。
で、ボクが始めに「今の話が出来たんは、室町時代以降やで~」言うたんは間違いではのうて、今の話の原型は室町時代に書かれた「御伽草子」に書いてあるんや、亀の恩返しがモチーフやし、乙姫さんや、竜宮城、玉手箱がでてくるんな。ただ、竜宮城は海中やのうて、島か大陸みたいに書いてはあるらしいけどな。 それはさておいて、や、万葉集やけどな、巻九にでとるんさな。
高橋虫麻呂作の長歌(歌番号1740)に、「詠水江浦嶋子一首」として、浦島太郎の原型といえる歌があるんや。原文はやや長いしなあ、難しいで省くさかいに、興味のあるひとは万葉集 巻9をみてんか。おおよそこんな内容やわな。
水の江の浦島の子が鯛や鰹を釣りにいって一週間も家に帰らんでおると、浜辺でわだつみ(海神)の娘(亀姫)と出会うた。二人は仲良うなって結婚し、常世にある海神の宮(竜宮城やな)で三年ほど暮らしとったんやと。こうして居ったら老いもせんと、長生きして、死にもせんとおれるのに、アホやなあ、そんなこと言うてもそのときは分からんか、まあ「ちょっとの間家へ帰って、父さんや母さんに、このこと知らせてきたい、明日にでも帰ってくるでな」って、亀姫さんに言うたら「此処へまた帰ってきてくれるんなら、これ持ってって、せやけど絶対開けたらあかんに」言われて、堅い約束をして、櫛笥(くしげ言うて化粧道具入れるもんやげな、これは玉手箱のことやろ)を貰うて来たんやなあ。 水の江へ帰ってきたら、もと住んどった家はないし、里ものうなってしもうて見る影もない。なんせこっちは常世と違うて、300年も経っとったんやもんな。そこで、あの箱開けてみたら、元の家が戻るかも分からん、そう思うてちょっと開けたら、白雲が出て常世に向かってたなびいたんや。浦島の子はびっくり動顛して気絶し、肌も皺だらけ、髪も真っ白になって、ついには息絶えて死んでしもうたんやと。 まあ、なんやなあ、ほかにも、同時代の海幸彦、山幸彦物語には、天皇家の始祖神武天皇のおじいさんに当たる山幸彦のはなしがよう似た男と女の情愛物語やいうし、もっとも古い文献では日本書紀に浦島子が蓬莱山へ行ったと言う記述があって、こっちは古代中国の神仙思想を元にした不老不死への願望から生じた作品らしい。他にも丹後国風土記にある記述が一番詳しいようで、神仙界での3年と人間界での300年という時間観念の差とかは、まあ不老不死のはなしやわなあ、浦島子という風流男と神仙界の美女との実に官能的な恋の描写やとかが、不即不離で描かれとるようやなあ。
室町時代以降の説話には、浦島子が鶴になり、亀と仲良うして明神になった言うのがあって、のちに鶴亀縁起の習俗として広まった。浦島にまつわる明神さんなど、神社も多いとか言うことや。
面白い言うては、語弊があるかも知れんが、他にも全国各地にようけ(たくさん)の伝説があって、近代になると内容が大きゅう変わってきてな、浦島太郎が竜宮城へ行ってからの行状が、とても子供にはふさわしゅうない内容になったんで、大きゅう書き換えられたちゅうことや。なんのこっちゃ、成人向きの小説が明治時代には、「恩返し」という美徳と、マジメに働かんとバチがあたるぞ、ちゅうことをテーマにした国定教科書の記述に変わったいうわけやわ。浦島伝説=竜宮伝説には、まだまだ、謎も多いみたいやし、へ~ちゅうてビックリするような話は仰山あって興味は尽きんけど、そもそもの物語の形になった発端は、古代貴族の官能小説やったことは間違いない。それが、いろいろ形を変えてはおるけど、1300年も連綿と続いてきたいうのは、驚きやなあ。
今回もそうや。「浦島さんの話言うたら、室町時代以降やで~、万葉集なんかには出て来んやろ」
「それが万葉集に出てるんですって、お得意のネットで調べて見て」 テキは、ボクの弱点先刻ご承知で見抜いてたわ。
調べて見るもんやなあ。浦島伝説の原型が万葉集にあったんや。知らんかったなあ。
「浦島太郎」の話は、誰でも知っとるわなあ。大概、うたも歌えるやろ。
「♪ むかし むかし 浦島は~ 助けた亀に連れられて~ 竜宮城へ来てみれば~…」 あれやがな~。
まあ、まず 唱歌 聴いてみてえ~。
そうさな、あのおとぎばなしや。浦島太郎は、浜で子供らにいじめられとった亀を助けたる。すると、お礼に亀が竜宮城へ連れて行く。竜宮城では乙姫様が大接待してくれた。すっかり有頂天になっとった太郎さんは、日のたつのも忘れとったけど、ああ、うちへ帰らななあかんわ、って乙姫さんに言うたら、これは絶対開けたらあかんに~て言うて、玉手箱くれたんや(パンドラの箱とおんなじみたいやなあ)。それ持って亀に送ってもらうて帰ってきたら、もう、村の様子がまるっきり変わってしもうとったんやなあ。そこで、乙姫さんに貰うて来た玉手箱をあけたら、白い煙が立ち上って、浦島太郎はおじいさんになってしもうた、とさ、ちょっとした快楽のあいだに300年の月日がたっとったちゅう話やさ、な。
で、ボクが始めに「今の話が出来たんは、室町時代以降やで~」言うたんは間違いではのうて、今の話の原型は室町時代に書かれた「御伽草子」に書いてあるんや、亀の恩返しがモチーフやし、乙姫さんや、竜宮城、玉手箱がでてくるんな。ただ、竜宮城は海中やのうて、島か大陸みたいに書いてはあるらしいけどな。
高橋虫麻呂作の長歌(歌番号1740)に、「詠水江浦嶋子一首」として、浦島太郎の原型といえる歌があるんや。原文はやや長いしなあ、難しいで省くさかいに、興味のあるひとは万葉集 巻9をみてんか。おおよそこんな内容やわな。
水の江の浦島の子が鯛や鰹を釣りにいって一週間も家に帰らんでおると、浜辺でわだつみ(海神)の娘(亀姫)と出会うた。二人は仲良うなって結婚し、常世にある海神の宮(竜宮城やな)で三年ほど暮らしとったんやと。こうして居ったら老いもせんと、長生きして、死にもせんとおれるのに、アホやなあ、そんなこと言うてもそのときは分からんか、まあ「ちょっとの間家へ帰って、父さんや母さんに、このこと知らせてきたい、明日にでも帰ってくるでな」って、亀姫さんに言うたら「此処へまた帰ってきてくれるんなら、これ持ってって、せやけど絶対開けたらあかんに」言われて、堅い約束をして、櫛笥(くしげ言うて化粧道具入れるもんやげな、これは玉手箱のことやろ)を貰うて来たんやなあ。 水の江へ帰ってきたら、もと住んどった家はないし、里ものうなってしもうて見る影もない。なんせこっちは常世と違うて、300年も経っとったんやもんな。そこで、あの箱開けてみたら、元の家が戻るかも分からん、そう思うてちょっと開けたら、白雲が出て常世に向かってたなびいたんや。浦島の子はびっくり動顛して気絶し、肌も皺だらけ、髪も真っ白になって、ついには息絶えて死んでしもうたんやと。
室町時代以降の説話には、浦島子が鶴になり、亀と仲良うして明神になった言うのがあって、のちに鶴亀縁起の習俗として広まった。浦島にまつわる明神さんなど、神社も多いとか言うことや。
面白い言うては、語弊があるかも知れんが、他にも全国各地にようけ(たくさん)の伝説があって、近代になると内容が大きゅう変わってきてな、浦島太郎が竜宮城へ行ってからの行状が、とても子供にはふさわしゅうない内容になったんで、大きゅう書き換えられたちゅうことや。なんのこっちゃ、成人向きの小説が明治時代には、「恩返し」という美徳と、マジメに働かんとバチがあたるぞ、ちゅうことをテーマにした国定教科書の記述に変わったいうわけやわ。浦島伝説=竜宮伝説には、まだまだ、謎も多いみたいやし、へ~ちゅうてビックリするような話は仰山あって興味は尽きんけど、そもそもの物語の形になった発端は、古代貴族の官能小説やったことは間違いない。それが、いろいろ形を変えてはおるけど、1300年も連綿と続いてきたいうのは、驚きやなあ。
by kentians
| 2010-12-16 18:22