3月3日は雛祭り。
「桃の節句」ともいわれ、雛人形を飾り、女の子の成長を祝う催しとして行われてきたものだ。千年以上の古い歴史があるが、一般庶民にまで普及したのは明治の末頃といわれ、それは「木目込み人形」が普及し始めたのと時を同じくしている。
先日久しぶりの好天の29日、「木目込み人形」に関わるひとりとして、話題の雛祭りは見ておくべきかと、最近人気のある伊勢・二見の「おひなさまめぐり」にでかけた。
二見といえば、夫婦岩、いまでこそ、伊勢志摩観光の玄関口と行ってはいるが、むかし鉄道と伊勢からのチンチン電車しかない頃は、伊勢参宮と二見はセットで一般観光はもとより、修学旅行でも定番のスポットだった。今は、奥志摩への休憩地程度と化しすっかり昔日の面影はない。
そこで街起こしの一環として始めたのであろう、「おひなさまめぐり」は、年々盛んになり、今年は百軒を超える家が、お雛様の展示に参加しているという。その数ゆうに五千体というから驚く。
メインは二見生涯学習センターの大規模な七段飾りの一千体のひな人形。

これは、数年前、徳島県勝浦町から譲り受けたという曰く付きの人形。もともと、人形浄瑠璃の盛んであった勝浦町では、古い人形を焼いて供養していたが、モッタイナイという声が全国から寄せられたところから、里親制度が生まれ、二見町もその一つに加わり、今に至って居るらしい。とにかく、明治、大正、しょうわ、へと、時代の変遷に伴う人形の移り変わりが観られるのも、楽しみのひとつだ。

こんな、微笑ましい人形も有り、一つ一つゆっくり観て居ると、見飽きない。

館内に展示されている町内の高泉庵住職の、絵手紙展も見所のひとつ。一枚一枚の絵と文、そしてその文字には味わいがあって、これも見飽きることがない。
もう一つの見所は、賓日館の展示。賓日館は、明治の中頃に賓客の休憩・宿泊施設として建設され、平成11年までは、皇室をはじめ各界要人が宿泊された品格ある建物で、庭園も含めて三重県の重要文化財に指定され、いまは資料館となっている。
ここでは、十二単の展示のほか、神宮造営用材の残材の檜の繊維を織り込んだ衣裳の親王揃いや、市松人形、創作木彫り雛などが目をひく。

上は檜織込親王揃 下は木彫り雛と 市松人形など


賓日館の見所は、その風格ある建築物や庭園にあるが、螺鈿の輪島塗りの床の間のある御殿の間、120畳敷き・能舞台付きの桃山式の大広間、そこに飾られた、三重の生んだ大家の書や絵画にあって、それらは驚嘆に値いする。




大広間の舞台に描かれた「老松」は二見の生んだ日本画家、中村左州のもので他の間にも左州の掛け軸がかかっていた。
此処には左州の作品展示室もあり、緻密な「大名行列」や「群れ鯛」などを鑑賞、堪能したが、残念ながら撮影禁止のため画像はない。
そのほか、百何カ所で明治、大正昭和の初期、20年代の雛飾りの数々が飾られてあると言うが、全てを一日で見て廻る事はとてもできぬ。それぞれの創られた時代、職人によって人形の姿かたち、衣裳、表情などが異なるのを観ているだけで楽しいし、歴史を感じ、時の経つのを忘れるからである。
町並みには餅花や、菜の花が家々を華やかに彩り、既に休業している嘗ての旅館や、みやげものやさん、一般の店舗や民家さえ、雛人形を飾っているようすは、、町ぐるみで、二見のシンボル「夫婦岩」にちなんだお内裏様に代表される雛人形を展示して町起こしをしているといった風情で微笑ましくもある。

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