2006年 10月 14日
からすうり(烏瓜) |
真夏の夜 藪や繁みで 人知れず レース飾りの花を咲かせた
あの幽玄とも 妖艶とも云いようのない 魅惑的な花が
晩秋のいま 見事な 朱色の実をつけて 楽しませてくれる
烏瓜は 雌雄異株のウリ科の多年草
あの細いが 強靱なつるで 辺りいっぱいに からみつき
夜目にも白い 艶やかなネットの花を咲かせる
妖艶な花は 雄花
可憐な方が雌花で こちらに実がつき 秋 朱く色づく
仲を取り持つのは 寄ってくるスズメ蛾
灯りもないのに どうして?
人智では はかり知れない 自然の不思議な仕組み
魅惑的な芳香が 彼らを誘うんだな
花の命は 一夜だけ 夏の夜の 儚い夢を見るようだ
若い青い実には うり坊のような白いスジ
地方によって 夏 この実をくりぬき 穴をあけ
中に小さなローソクを灯した 瓜灯籠をつくる風習がある
宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」のなかにも
確か この瓜灯籠を 川に流すシーンが あったっけな
烏が好むから烏瓜って云うんじゃなくて
秋 色づいた実の色が 辰砂の緋色に似ているから
(唐朱瓜)というんだって
昔は果汁を化粧水に 実や種はいろんな生薬に
根の澱粉は 天花粉(天瓜粉=てんかふん)に使ったんや
年寄りは 今でもベビーパウダーのことを 天花粉というわなあ
種子は その形から 「打出の小槌」いうて
財布へ入れとくと お金が儲かるいうし
ぼくらは「大黒様」などと云って とりあって遊んだ
身分が違うと この種子が 艶書の結び文に似てるからって
烏瓜の別名を「玉章(たまずさ)」とも云ったんだって
何だか艶っぽくって いいね
それかあらぬか花言葉は 「よき便り」「誠実」だとか
自然は いろいろ夢を膨らませてくれるなあ
たかが烏瓜 されど烏瓜だね
←妖艶な雄花
↓若い実
by kentians
| 2006-10-14 21:41